2026.03.27
Sony Innovation Fund presents Remarkable Startups

株式会社リトプラ|アソビでミライをつくる――日本発の次世代テーマパークが切り拓くエンタメの新境地

Sony Acceleration Platformは2022年8月より、革新的なテクノロジーやビジネスモデル、サービス、プロダクトをもつスタートアップに投資しビジネスをサポートするSony Innovation Fund(SIF)と協業し、SIFの投資先スタートアップ企業を支援しています。Sony Acceleration PlatformとSIFはこの協業により、有望なイノベーションを育み、豊かで持続可能な社会を創り出すことを目指しています。

今回は、株式会社リトプラ 代表取締役CEO 後藤 貴史さん、ソニーベンチャーズ株式会社 シニアインベストメントダイレクター 鈴木 大祐の対談インタビューをお届けします。

株式会社リトプラ 代表取締役CEO 後藤 貴史さん
ソニーベンチャーズ株式会社 シニアインベストメントダイレクター 鈴木 大祐

年間100万人を超えるゲストが訪れる体験型施設

――まず、株式会社リトプラの事業概要を教えてください。

後藤さん:当社は「アソビでミライをつくる」をミッションに掲げ、キッズ・ファミリー向けの体験型エンタテインメント施設を開発・運営しています。プロジェクションマッピングやAR(拡張現実)、画像解析などの最新テクノロジーを活用した多彩なアトラクションを提供しています。「砂遊び」「紙相撲」「影絵遊び」など昔ながらの遊びをベースにしているため、難しいルールや操作を必要とせず、三世代で一緒になって楽しめます。
現在は、主力ブランドである「リトルプラネット」を中心に「TOYLO PARK(トイロパーク)」、「Muchu Planet(ムチュウプラネット)」、そしてタカラトミー様と共同開発した「タカラトミープラネット」という4つのブランドを、商業施設内を中心に展開しています。加えて、「リトルプラネット」とリンクした各種サービスやアプリを法人/個人の皆様に提供しています。

当社の特徴は、企画開発・設計設営・運営仕組みづくりまでを内製している点です。アトラクション、スマートフォンアプリ、グッズ、さらにはパーク内の設備やゲストの導線設計に至るまで、すべてを一貫したテーマで設計し、質の高い体験の提供を目指しています。また、直営店の運営はもちろん、「リトルプラネット」のライセンス契約に基づいたフランチャイズ出店も推進しています。現在は、4つのブランド全体で年間100万人を超えるゲストにご来場いただいています。

また、5年ほど前からB to Bでキッズスペースやソフトウェアの開発を請け負う事業も立ち上げており、こちらも経営の柱の一つとなっています。このB to Bの事業は、さまざまな企業とつながるきっかけにもなっており、コラボレーションや「リトルプラネット」ブランドの横展開にも大きく寄与しています。

昔ながらの遊びにデジタルが融合した次世代型テーマパーク「リトルプラネット」
昔ながらの遊びにデジタルが融合した次世代型テーマパーク「リトルプラネット」

ソニーグループとの親和性と収益性の高さ

――SIFとしては、リトプラ社のどこに注目していますか?

鈴木:リトプラ社のポイントは大きく3点あると考えています。

1. ソニーグループとの親和性の高さ 2. ターゲット年齢層の幅広さ 3. 気兼ねなくフラットに議論ができる社風

1つ目は、ソニーグループとの親和性の高さです。近年、ソニーグループではエンタテインメント事業を大きな柱の1つとしており、多くのIPを有しています。その上で、LBE※はエンタテインメント事業やIPビジネスを収益化する大きな役割を果たしていくと考えています。リトプラ社は、このLBE領域で大きな実績とビジネススケールを有している数少ない日本企業であり、今後さまざまなコラボレーションやシナジーを生み出していけると見込んでいます。

2つ目は、幅広い年齢層をターゲットにしている点です。「リトルプラネット」のコンテンツはお子様向けですが、来場されるゲストは親御さんを含めたファミリーです。祖父母の方々が一緒に利用されるケースもあります。もちろん、大人も一緒に楽しめる要素も盛り込んでいますが、親御さんたちにとってはお子様が喜んでいることが一番のエンタテインメントです。
このようにターゲットとなる年齢層が幅広いことが、LBEビジネスとしての収益性を高めています。

3つ目は、気兼ねなく対話ができる社風です。これまで、リトプラ社の皆さんとお話しさせていただく機会は何度もありましたが、穏やかで優しい方ばかりでした。家族のように気兼ねなく話せる雰囲気があり、それがファミリー層が楽しめる施設・コンテンツづくりにつながっていると感じています。

※ LBE: Location-Based Entertainment
ソニーベンチャーズ株式会社 シニアインベストメントダイレクター 鈴木 大祐(左)株式会社リトプラ 代表取締役CEO 後藤 貴史さん(右)

学生時代に起業し、会社員となり、再び起業の道へ

――リトプラ社を創業する前に、後藤さんは学生時代にゲーム会社を起業していたとお聞きしました。そこから現在にいたるまで、どのようなキャリアを歩んでこられたのでしょうか?

後藤さん:在学中に、起業された方々に出会ったことがきっかけです。就職以外にも起業という選択肢があることを知りました。そこから良いご縁があり、投資家の方から出資していただく形で「ポケラボ」という携帯ゲームの会社を起業することができました。最初の2年間はマネタイズできず非常に苦しい日々を過ごしたのですが、何とか事業を軌道に乗せることができ、2012年に大手携帯ゲーム会社に事業を売却しました。少し珍しいケースだとは思うのですが、売却後も「ポケラボ」で社員として4年間働きました。当時はゲーム開発に集中できましたし、会社員として働いた日々は楽しかったですね。経営者のプレッシャーから解放され、気持ちもすごく楽になりました。

鈴木:投資家の視点から見ても「ポケラボ」で築かれた実績は、素晴らしいものです。3桁億円でのM&AによるEXIT実績、そこに至るまで会社をしっかりゼロから作り、運営をされてきた経営者としての実績がある、いわゆる「シリアルアントレプレナー」です。それにもかかわらず、後藤さんはその実績をひけらかすことなく、常に自然体で謙虚でいらっしゃいます。こうした姿勢こそが、後藤さんの経営者としての大きな魅力の一つだと感じています。

――そこから、再度起業しようと決意した経緯を教えてください。

後藤さん:きっかけは、VRとの出会いでした。2015年にVRを体験する機会があり、初めて装着した時にものすごい衝撃を受け、そこからXR領域で新しい体験を提供できる場をつくりたいと考えるようになりました。社内で新規事業を立ち上げるのが難しかったという事情もありましたが、「ポケラボ」を起業してから駆け抜けた日々が恋しくなった面も大きかったです。競合と切磋琢磨し、刺激が多く、1日1日が非常に濃い生活は、やっぱり会社員とは違った醍醐味があります。そこから、「ポケラボ」時代に苦楽を共にし、現在当社のCCOを務めている鈴木に声をかけて起業の準備を進めていきました。

――お子様をはじめとしたファミリー層をターゲットとしたのは、なぜですか?

後藤さん:「リトルプラネット」のビジネスモデルのベースはCCOの鈴木と一緒に構想しました。当時、彼は3人目の子どもが生まれる時期で「子どもたちに誇れる仕事がしたい」と考えていました。私自身もXR領域で起業するのであれば、テーマパーク事業でファミリー層がターゲットになるだろうとイメージしていたので、2人の想いが重なって「リトルプラネット」の骨格が出来ました。

鈴木:レジャー事業を安定的に運営するには、ファミリー層の確保が極めて重要です。大手のテーマパークも基本的にはファミリー戦略を中心に置くことで、安定的な収益基盤を作っています。その観点で、リトルプラネットが子ども ・ファミリー層向けのLBE事業から着手して、その後に顧客対象を拡大していく戦略アプローチは理にかなっていると思います 。

株式会社リトプラ 代表取締役CEO 後藤 貴史さん2

堅実な初期投資の中で、最高のコンテンツを追求する

――起業当初はどのような課題に直面しましたか?

後藤さん:経験がなかったこともあり、リアルなテーマパークを作って運営していく部分で、難しさを実感することが多かったです。ゲームやソフトウェアの開発に関してはノウハウがありましたが、施設の設計や施工に関しては知見がありませんでした。試行錯誤を積み重ねながら「リトルプラネット」を作っていく中で学んだことは、事業計画に沿った初期投資を徹底することです。最高の機材や設備を導入すれば、クオリティの高いものは作れるかもしれません。ただ、それ以上に大切なのはコストを回収できる事業設計です。私としても、高額な機材や設備を導入したい気持ちはありますが、グッと我慢して“設定した予算の中で最高のものを作る”ことに向き合い続けてきました。

鈴木:私が前職で某大手テーマパークの再建に携わっていた時に最初に取り組んだのも、なるべく投資を抑えつつ、常にゲストの皆様に新しいパークを感じてもらい、再来訪したいというリピート動機を作ることでした。コストさえかければ誰でも相応の良いものを作れますが、コストを抑えて集客効果の高いものを作るノウハウを持つことがLBE事業者の腕の見せ所になります。その LBE領域で、全国規模でパーク展開を実現しているスタートアップは他にほとんど見当たりませんが、これができているのもリトプラさんがこのコストとクオリティ・集客力のバランスをうまくとれるノウハウを積み上げてこられたからでしょう。

――パークを運営していくマニュアルやスタッフの教育など、運営面のしくみづくりはどのように取り組んでいますか?

後藤さん:大手子ども向けインドア体験施設にて施設責任者を経験した人材が、創業初期からメンバーに加わっており、彼のノウハウと経験をベースに、パーク運営マニュアルを策定しました。実際に「リトルプラネット」を運営する中で、このマニュアルの価値を強く実感するようになりました。例えば、マニュアルで定めたスタッフの人数を確保できていない時間帯は、必ずお客様満足度にネガティブな影響が出てしまいます。現場のスタッフ全員がマニュアルに沿った施設運営を徹底することで、この10年で大きなトラブルなく、運営を続けることができています。引き続き、質の高い運営・オペレーションを実現できるように、各パークのスタッフ、フランチャイズ出店をしていただいているパークライセンスパートナーの皆様と一緒に、マニュアルに沿った運営を継続していきたいです。

鈴木:本当におっしゃる通りで、LBE事業の根幹はやはりオペレーションノウハウだと思います。どんなに良い技術や創作物を導入したとしてもオペレーションがまともにできなければ、意味はありません。オペレーションノウハウは経験値からしか学べないので、リトプラさんのように毎日30の施設で経験値を溜め続けていることは、それ自体が強みになると考えています。

コロナ禍を乗り越えた全社員で新たなミッションを策定

――リトプラ社を起業してから10年を迎えましたが、これまで経営する中で最も大変だった時期はいつですか?

後藤さん:やはり、コロナ禍ですね。「リトルプラネット」は出店している商業施設が休業すると営業できなくなりますが、固定費は発生します。コロナ禍になった直後に計算したところ、休業が続くと6カ月でキャッシュアウトすることが判明しました。そこから、すぐに再生計画を策定し、私の方で資金調達や補助金制度の活用などに取り組み、「リトルプラネット」の開発メンバーには、新たにB to Bの事業に取り組んでもらうことを決めました。それまでも、ソフトウェアの開発、遊具やアイテムの利用について各社から問い合わせはいただいていたのですが、当時は「リトルプラネット」の開発と運営に集中するためにお受けしていませんでした。しかし、そんなことを言っている状況ではなかったため、大きく舵を切ることにしたんです。手元にあった2000枚ほどの名刺を頼りに必死で営業しました。そこから、ありがたいことにお仕事をいただけるようになっていき、B to B事業でキャッシュを生み出しながら、コロナ禍が開けた後の事業計画を練っていきました。

――元々リトルプラネットの事業に魅力を感じて入社された方々は、複雑な心境だったのではないでしょうか?

後藤さん:そうですね。実際に会社を離れていった人もいました。ただ、40名近くの社員が残ってくれ、なんとか2021年には黒字化することができました。厳しい状況に直面しても、自分と会社を信じてついてきてくれたメンバーは、仲間を超えた家族のような大切な存在です。そこから改めてスタートを切るべく、全社員参加でミッションを新たに策定するワークショップを開催しました。ミッションも社名もコーポレートサイトも全て一新し、この時期を第二創業に位置付けています。

このワークショップで、自分たちがやっていきたいこと、引き続き残していきたいコアの部分を抽出して選ばれたのが、人々のイマジネーションを刺激する「アソビ」でした。そして、世代、地域、言語、文化といったあらゆるボーダーを飛び越えていける「アソビ」をクリエイトしていくことを自分たちのミッションとして、「リトルプラネット」はもちろん、B to Bの事業においても大切にしています。

鈴木:リトプラ社の皆さんにあるファミリーのような一体感は、厳しい時期を共に乗り越え、会社の新たなミッションを一緒に考え抜いたからこそ、より一層強固なものになったのですね。それに加えて、個人的には後藤さんの事業に対するまっすぐな情熱やそのお人柄も、社員の方々が「この先も一緒に働きたい」と思える理由の1つなのだろうと感じています。

社員の皆さんと撮影した集合写真
社員の皆さんと撮影した集合写真

クリエイティブとビジネスと現場が三位一体となった組織を目指す

――リトプラ社を経営する上での信念や大切にしている考えを教えてください。

後藤さん:大きく2つあります。1つ目は、クリエイティブとビジネスの融合です。高い熱量を持った非合理で人を惹きつけるクリエイティブと、しっかりと収益を生み出していくビジネス、この2つを適切なバランスで融合させてお客様にお届けしていくことが、事業のカギだと思っています。
2つ目は、社員のEQと職場の空気感です。今後、規模を大きくしていく上でより一層重要になってくるポイントだと捉えています。特に、私たち経営陣や各エリアを統括するスーパーバイザーのEQとコミュニケーションの質を高めていくことが、健全で前向きな職場づくりとお客様の満足度向上に直結していきます。全社員と全店舗の日報に目を通していますが、お客様と毎日接している現場社員のEQは非常に高いと感じますので、やりがいを持ってお客様と仕事に一生懸命向き合える環境を今後も大切にしていきたいと思っています。
クリエイティブとビジネスと現場――これらがバランスよく三位一体となって高め合うことが、今後の当社の継続的な成長につながっていくと考えています。

※ EQ: 感情的指数。IQとの対比で良く使われる指標

――経営における信念や社員の方々と絆がここまでの事業成長の基盤にあったんですね。加えて、お客様に楽しんでいただくコンテンツを生む出し続ける秘訣があれば、ぜひお聞かせください。

後藤さん:社員の高いクリエイティビティをベースに、全社員で定期的にハッカソンを開催するなど、アイデアを形にする機会を設けるようにしています。そして、新たなコンテンツを提供する上で必ず実施しているのが「こどもレビュー」です。テスト段階の新コンテンツを子どもたちに遊んでもらうのですが、基本的にこのレビューで反応が良かったものしか展開していません。子どもたちがどんなものに興味を示すのかは、どれだけ経験を積んでも大人である私たちには理解しきれない部分があります。子どもに楽しんでいただけるコンテンツを更新し続けられているのは、この「こどもレビュー」がしっかりと機能しているからだと考えています。

「こどもレビュー」の様子
「こどもレビュー」の様子

――SIFからのサポートに対する印象をお聞かせください。

後藤さん:鈴木さんにソニーグループのクリエイターの方々と交流する機会をたくさんいただいています。新しいものを生み出そうとする熱量が圧倒的に高く、当社の社員も非常に良い刺激を受けています。また、私の方ではビジネスサイドのお話もさせていただいており、さまざまなコラボレーションや共創をしていければと考えています。

鈴木:実際のコラボレーションに至るまでにはまだいくつか越えるべきハードルがありますが、今ディスカッションを進めている新しい取り組みを発表できる日を楽しみにしています。今後もソニー内の様々な部署の皆さんとリトプラさんの交流の機会を増やし、新しいLBEの体験価値創造を手掛けていけたらと思っています。

世界中の誰もが知っているテーマパークに

――今後の目標や展望を教えてください。

後藤さん:日本発のテーマパークとして「リトルプラネット」を国内外に幅広く展開していきたいです。現在は東南アジアを中心に高く評価いただいており、海外展開にも手応えを感じています。そして、「リトルプラネット」を世界中の誰もが知っているようなテーマパークブランドにしていきたいです。

ソニーベンチャーズ株式会社 シニアインベストメントダイレクター 鈴木 大祐(左)株式会社リトプラ 代表取締役CEO 後藤 貴史さん(右)  2

Sony Acceleration Platformは、新たな価値を創造し豊かで持続可能な社会を創出することを目的に2014年にソニー社内の新規事業促進プログラムとしてスタートし、2018年10月からは社外にもサービス提供を開始。ソニーが培ってきた事業開発のノウハウや経験豊富なアクセラレーターによる伴走支援により、1000件以上の支援を27業種の企業へ提供。
新規事業支援だけでなく、経営改善、事業開発、組織開発、人材開発、結合促進まで幅広い事業開発における課題解決を行ううえで、ソニーとともに課題解決に挑む「ソリューションパートナー企業」のネットワーク拡充と、それによる提供ソリューションの拡充を目指します。(※ 2026年2月末時点)

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