2026.02.06
Sony Innovation Fund presents Remarkable Startups

【特集】ソニーベンチャーズ株式会社|グループ内外でのコラボレーションを加速させ、スタートアップ支援を次のステージへ

Sony Acceleration Platformは2022年8月より、革新的なテクノロジーやビジネスモデル、サービス、プロダクトをもつスタートアップに投資しビジネスをサポートするSony Innovation Fund(SIF)と協業し、SIFの投資先スタートアップ企業を支援しています。Sony Acceleration PlatformとSIFはこの協業により、有望なイノベーションを育み、豊かで持続可能な社会を創り出すことを目指しています。

今回は、SIFを運営するソニーベンチャーズ株式会社の代表取締役社長である波多野 和人にインタビューし、SIFが掲げる“Values”とそれらに紐づいた行動指針、チームマネジメントの考え方、Sony Acceleration Platformとのさらなる連携など、SIFの強みの源泉や投資戦略に迫ります。

ソニーベンチャーズ株式会社 代表取締役社長 波多野 和人

継続的かつ安定的にスタートアップへ投資できる体制に

――SIFのこれまでの歩みを教えてください。

波多野:SIFは、ソニーグループ初のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)として2016年に創設されました。ファンドの運用総額は650億円を超え、経験豊富な投資専門チームによりこれまで世界各国で創造と革新をもたらす有望なスタートアップ企業約200社へ投資し、ソニーの技術者と協力体制を築きながらその成長をサポートしています。
2019年には、より安定的に投資できる環境の構築とファンドのパフォーマンス最大化を目指して、大和キャピタル・ホールディングスとともに共同ファンド「Innovation Growth Fund」を設立。リミテッドパートナー(LP)からの投資も加え、ミドル・レイターステージの企業へ投資しています。
その後、地球環境問題へ取り組む企業を支援する「Sony Innovation Fund:Environment」(2020年)、ミドル・レイターステージの企業にさらなる投資を行う「Sony Innovation Fund 3」(2022年)、アフリカのエンタテインメント事業を支援する「Sony Innovation Fund:Africa」(2023年)など、スタートアップ企業のステージに合わせたファンド、業界や地域に特化したファンドを組成し、現状5つのファンドを運用しています。また、ファンドの新設も検討しており、スタートアップの事業成長に合わせて継続的な投資ができるように体制を強化しています。

Sony Innovation Fundの軌跡

現地メンバーの情報収集と対話が必須

――SIFの理念や活動指針を教えてください。

波多野:SIFでは「Founders First」「Stakeholder Collaboration」「Diversity & Respect」「Transformative Impact」という4つの“Values”を掲げています。
この“Values”を体現する活動指針の一つとして、私たちはアーリーステージのスタートアップに対して直接投資することを基本ポリシーとし、自分たちの知見も得られるようにしています。また、現在、日本・米国・欧州・インド・イスラエル・アフリカに拠点をもち、原則として現地にSIFのメンバーがいるこれらの地域の企業に投資をしています。もちろん、さまざまな角度からスタートアップや市場の情報は集めていますが、最終的な投資判断や投資後のバリューアップを支援するためにも、現地で活動し密にコミュニケーションすることが必要不可欠だと考えています。

4つの“Values”

アフリカのエンタテインメント領域を支援

――アフリカに拠点とファンドを立ち上げている理由を教えてください。

波多野:US$10Millionの「Sony Innovation Fund:Africa」設立の背景には、ソニーグループのアフリカにおける事業戦略があります。ここ数年でのグローバル・サウスの経済成長の勢いは目覚ましく、インドや中東では世界的なスポーツ大会や国際博覧会の成功に加え、アニメ・映画・ゲームといったエンタテインメント分野でも存在感は非常に大きくなっています。
一方で、アフリカはまだ発展途上ですが、今後の急成長を遂げるポテンシャルを秘めています。インフラをはじめとしたさまざまな産業が成長していくと予測される中、「ソニーグループとの共創」という観点でアフリカではエンタテインメント業界に集中して投資活動をしています。私たちは、アフリカの音楽、アニメーション、映画、ゲーム、そしてコンテンツ配信などの成長に期待を寄せていますし、その成長の鍵となるアフリカのコンテンツクリエイターを支援しています。あらゆる機会を通じて、アフリカのエンタテインメント産業とともに私たちソニーグループもさらなる事業成長を目指していきます。現在は、ソニーミュージック、ソニー・ピクチャーズ、ソニー・インタラクティブエンタテインメントのアフリカ担当者もSIFのステアリングコミッティメンバーとして参画しており、ソニーグループならではの協力体制を築いています。

――特に注目している分野はありますか?

波多野:ナイジェリアの映画は「ノリウッド」と呼ばれ、アメリカのハリウッド映画、インドのボリウッド映画に次ぐ規模と言われており、今後さらなる成長が見込めると考えています。実際に、ナイジェリアで映像制作の業務管理プラットフォームを提供しているスタートアップへの投資を行っており、ビジネスの成長はもちろん、現地でのクリエイターとのネットワークの拡大にも期待を寄せています。

――一方で、国の情勢や生活環境を考えると、アフリカは他の地域とは異なる進出のハードルがあるかと思います。この点は、どのような形で課題解決を進めていますでしょうか?

波多野:採用に関しては、現地に人を置く、という方針のもと、ケニアでメンバーを採用し投資活動を強化しています。また、新興国での投融資活動を積極的に行っている世界銀行傘下のIFC(国際金融公社)と協業契約を結んでいる点も、アフリカ拠点の大きな特徴です。他の地域と比べて生活やビジネスの環境が大きく異なるアフリカにおいて、IFCの皆様にはビジネスやロジスティクスにおいて多大な支援をいただいています。
ソニーグループ内外で協力体制を構築することで、投資活動を通じてアフリカのコンテンツクリエイターの方々とのつながりをつくり、これからアフリカ発の新たなエンタテインメントの創出、展開を支援していきたいです。

ソニーベンチャーズ株式会社 代表取締役社長 波多野 和人2

6つの投資領域で革新的な技術を有するスタートアップへ投資

――SIFではどのような領域に投資をしているのでしょうか?

波多野:SIFでは、「DeepTech」「EntertainmentTech」「EnterpriseTech」「Fintech/DLT※1」「ClimateTech」「LBE※2」の6つの領域を定めて、投資活動を行っています。
「DeepTech」では、AI、半導体、サイバーセキュリティ、量子コンピューティング、最先端素材やエネルギー技術など、社会や産業に大きな変革をもたらす技術をもつスタートアップへ投資をしています。6つの領域の中で最も広域であり、同時にソニーグループにとって非常に重要となるテクノロジーの源泉であると捉えていますが、特に時間がかかる領域でもあり最近では投資サイクルが7~8年に伸びるようなケースも増えています。
そして、ソニーグループにおいて主要ビジネスの柱であるエンタテインメント事業に関連する「EntertainmentTech」、大企業向けのITソリューションを対象とした「EnterpriseTech」、キャッシュレス決済や暗号資産関連サービス、ブロックチェーンなどの金融や社会のしくみに変革を起こす「Fintech/DLT※1」、気候変動の緩和や適応を目的とした「ClimateTech」を投資領域としています。
さらに新設したのが「LBE※2」です。テーマパークや体験型施設、イベントなどを指す領域であり、「EntertainmentTech」と重なる部分も大きいですが、ユーザーの体験形態、ビジネスモデルなどが異なるため、棲み分けています。
これら6つの領域は、お互いに重なり合う部分もあり、各領域のメンバーで連携、協力しながら投資検討を行っています。

※1 DLT: Distributed Ledger Technology
※2 LBE: Location-Based Entertainment
SIF投資領域

「Diversity & Respect」が投資検討を研ぎ澄ます

――約40名の投資メンバーをマネジメントする上で、波多野さんが大切にされていることを教えてください。

波多野:まず大切にしているのは、SIFメンバー一人ひとりはもちろん、様々なステークホルダーとの信頼関係の構築です。基本的なことではありますが、SIFメンバーとの関係については“お互いが楽しく”を常に意識しています。当然、それぞれ魅力的な個性を持っており、楽しいと感じることは十人十色です。各メンバーといろいろな機会を捉えて対話し、今何に興味があり、その時その時で何を楽しいと感じているのかを理解するようにしています。
日々の業務では、投資領域ごとの週次ミーティングにより、各人が投資を検討している案件に対して議論や意見交換をしています。多角的な視点で検討し、その中で厳選されたわずかな案件だけが投資対象となります。
さらに年に一度、SIFの全地域のメンバーが一堂に会し、3日間にわたり投資戦略の確認、各地域や投資領域の最新情報・状況、好事例や新しい取り組みなどを共有しながら議論する場を設けています。ソニーのトップマネジメントや各事業ユニットからも参加してもらい、対面で意見交換のできるとても大事な機会で、例えば十時さん(代表執行役 社長 CEO)、御供さん(代表執行役 CSO)と各リージョンの責任者、メンバーが様々なトピックについて議論するようなセッションもあります。各国の多様なメンバーが互いにリスペクトし合い、真剣に意見を交わすミーティングは、“Values”の一つである「Diversity & Respect」が最も発揮される場面だと思います。

また、重要なステークホルダーであるソニーのトップマネジメント、各事業ユニットの方々とはこの会議体以外にも年に数回の定期的な対話の機会があり、市場環境、SIF投資戦略、投資先へのバリューアップを通じた各事業ユニットへの貢献事例などの共有に加えて、こうした方々からのSIFに対する期待、要望をいただきながら戦略をアップデートして新たな貢献につなげるといったサイクルを回し、さらなる信頼関係の向上に努めています。

――人材はどのように集まってくるのでしょうか? 

波多野:ソニーグループの各事業からSIFに異動したメンバーや事業部と兼任しているメンバーがいます。最近はSIFメンバーが事業部を兼務する形もつくり、より事業部と連携しやすい体制になりました。
また、拠点間の人材ローテーションも行っています。日本から英国やインドに赴任したり、米国から日本へ赴任したり、またフランスから米国へ移った例もあり、グローバルでのローテーションも意識しています。やはり、一つの国の考え方やスタイルだけでなく、各国・地域のビジネスや文化を学びながらコミュニケーションすることで、メンバーのさらなる成長とチーム内でのパーセプションギャップを埋めていきたいと思っています。

Sony Acceleration Platformとのコラボレーションで「Sourcing」と「Value up」を強化

――Sony Acceleration Platformとは、どのような連携を目指していますか?

波多野:ソニーベンチャーズの活動サイクルは「Sourcing」「Execution」「Value up」「Exit」の4つに分類できますが、Sony Acceleration Platformと大きなシナジーを生み出せるのは「Sourcing」と「Value up」だと考えています。
「Sourcing」は新たなスタートアップや技術を探す段階ですが、Sony Acceleration Platformは有望なスタートアップや今まさに事業開発が進むプロジェクトと接点を持っているため、大きな力になります。また「Value up」においては、Sony Acceleration Platformの事業開発経験に基づいたアドバイザリー支援などを通じて、ソニーが投資先スタートアップの成長機会の醸成に貢献できます。現在、約40%の投資先に具体的なバリューアップ施策を提供していますが、Sony Acceleration Platformとの連携をさらに強化することで、この比率を50%以上に引き上げていきたいです。
加えて、Sony Acceleration Platformはスウェーデンにも拠点を構えていますので、今後グローバル展開もさらに推進できると考えています。

投資先バリューアップ方針

投資を通じてイノベーションを推進し、ソニーグループの成長につなげる

――今後のSIFの展望をお聞かせください。

波多野:SIFでは“Values”の一番に「Founders First」を掲げており、そうありたいと思っています。ファウンダーやアントレプレナーを積極的にサポートし、グローバルレベルでスタートアップが成長できる文化を育んでいきます。LPの皆様に投資していただいていることもあり、ファイナンシャルリターンを上げていくことは最低限のミッションですが、それだけではCVCが果たす役割としては不十分です。新しい技術、サービス、製品、あるいはビジネスモデルなど、最先端のトレンドをスタートアップに、そしてソニーグループにもフィードバックしていくことで、ソニーグループ全体の成長にもつなげていきます。

ソニーベンチャーズ株式会社 代表取締役社長 波多野 和人3

Sony Acceleration Platformは、新たな価値を創造し豊かで持続可能な社会を創出することを目的に2014年にソニー社内の新規事業促進プログラムとしてスタートし、2018年10月からは社外にもサービス提供を開始。ソニーが培ってきた事業開発のノウハウや経験豊富なアクセラレーターによる伴走支援により、970件以上の支援を27業種の企業へ提供。
新規事業支援だけでなく、経営改善、事業開発、組織開発、人材開発、結合促進まで幅広い事業開発における課題解決を行ううえで、ソニーとともに課題解決に挑む「ソリューションパートナー企業」のネットワーク拡充と、それによる提供ソリューションの拡充を目指します。(※ 2025年12月末時点)

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