2025.01.16
Sony Innovation Fund presents Remarkable Startups

Woodstock株式会社|SNS型投資アプリで日本に新たな金融カルチャーを作る

Sony Acceleration Platformは2022年8月より、革新的なテクノロジーをもつスタートアップに投資しビジネスをサポートするSony Innovation Fund(SIF)と協業し、SIFの投資先スタートアップ企業に支援提供を開始しました。Sony Acceleration PlatformとSIFはこの協業により、有望なイノベーションを育み、豊かで持続可能な社会を創り出すことを目指しています。

本連載では、SIFの国内投資先スタートアップ企業を1社ずつご紹介します。各スタートアップ企業の知られざるストーリー、今注力するビジネスとは?スタートアップ企業の軌跡と未来に迫ります。

今回は、Woodstock株式会社 CO-FOUNDER & CEO ブライアン・ユンさん、
ソニーベンチャーズ株式会社 マネージングダイレクタージャパン 北川 純、インベストメントマネジャー 川崎 絵里子の対談インタビューをお届けします。

Woodstock株式会社 CO-FOUNDER & CEO ブライアン・ユンさん
ソニーベンチャーズ株式会社 マネージングダイレクタージャパン 北川 純
ソニーベンチャーズ株式会社 インベストメント マネジャー 川崎 絵里子

誰もが気軽に投資を始められるプラットフォームを

――まず、Woodstock株式会社の事業概要を教えてください。

ブライアンさん:私たちは、米国株・ETFが取引できる、SNS型米国株投資アプリ「Woodstock.club(ウッドストック)」を開発し、運営しています。ウッドストックは、株式投資とソーシャルメディアを融合させたプラットフォームとなっており、ユーザーは任意でポートフォリオやトレードの内容をリアルタイムでシェアすることが可能です。そして、ウッドストックで得た情報をもとに、ユーザーはポートフォリオのアップデートやディシジョンメイキングを行うことができます。

――ウッドストックは、これまでにない新しい投資アプリですが、どんなビジョンを描いて事業を始められたのですか?

ブライアンさん:「豊かな未来を、みんなで。」というミッションを私たちは掲げていますが、コミュニティの力を使って、一人でも多くの人たちが投資に踏み出し、安心して人生を謳歌するためのサポートをしていきたいと思っています。特に日本は、他の国と比較すると、投資して資産運用をするカルチャーがまだ定着していません。そのため、ウッドストックでは、投資に対するハードルをできる限り下げるための工夫を施しています。200円から気軽に投資を始められ、手数料は為替手数料1%のみで、口座開設も無料で本人確認もスマホにマイナンバーカードをかざすだけです。こういった投資未経験の方々の視点に立ったサービスやコンテンツが、他の投資アプリと異なる特徴だと考えています。

――ユーザー同士で情報をシェアできる点も大きな特徴だと思いますが、どのような狙いを持ってSNS型の投資アプリを立ち上げたのでしょうか?

ブライアンさん:ユーザーの皆様に、ウッドストックを通じて金融リテラシーを育んでいただきたいという思いがあります。金融リテラシーは、書籍や座学だけでは学び切れないものであり、各業界や企業の状況、今後の予測、アナリストの意見などをインプットし、失敗と成功を繰り返しながら、実践の中で身に付いていくものだと考えています。そういった意味でも投資を少額から始めて、みんなと自分の経験と感情をシェアできることが非常に大切です。たとえ一度失敗しても、相談したり分かち合える人がいると、励まされるだけでなく、失敗から学ぶことで、その後も投資を続けられると思っています。そういった投資に関する「失敗」と「学び」と「成長」を得られるという意味で、SNS型であることが大きな役割を果たしていると考えています。

投資をしている人は少ないが、興味のある人は多い

――株式投資とソーシャルメディアを融合させるプラットフォームは非常にユニークだと思いますが、このアイデアはどこから生まれたのでしょうか?

ブライアンさん:日本は他の国と比べて投資をしている人は少ないのですが、SNSを見ると資産形成に興味を持っている人は多いことに気づきました。同時に、既存の投資サービスの利用について心理的なハードルが高いことにも気が付き、もっと気軽に始められる投資サービスが求められているのではないかと思ったことが、事業を立ち上げたきっかけです。また、私自身がトレーディングシステムのエンジニア、トレーダー、SNSプラットフォームのデジタルマーケティング・経営戦略・ファイナンス業務などに携わってきたことも、SNSと投資を組み合わせるというアイデアと運営ノウハウのベースになっています。

ウッドストックのUI(ユーザーインタフェース)
ウッドストックのUI(ユーザーインタフェース)。各社の株価はもちろん、他のユーザーの取引状況や投稿によって情報や経験、感情をシェアできる
アプリユーザーの実際の公開ポートフォリオ
アプリユーザーの実際の公開ポートフォリオ

――現在のウッドストックのユーザー層についても教えてください。

ブライアンさん:投資をしたことがない若年層をメインターゲットとしていることもあり、現在ユーザーの半数が29歳以下となっています。そして、ユーザー全体の7割以上の方が投資未経験だった方々[1] です。そのため、初心者だから恥ずかしい、ということもなく、自由にコミュニケーションをとっていただけていると思います。

また、私を含め、社員全員が日々ウッドストックを利用しているユーザーでもあります。自分たちが毎日利用し、ユーザーの皆様とコミュニケーションを取ることで、ユーザーの皆さまが求める新たなコンテンツや機能のアイデアを見つけることができます。

Woodstock株式会社 CO-FOUNDER & CEO ブライアン・ユンさん

「貯蓄から投資へ」を推進するビジネスモデルとチーム

――SIFのお二人は、Woodstock社のどこに注目していますか?

北川:Woodstock社のポイントは大きく3点あると考えています。

1.ユニークでインターナショナルなチーム 2.プロダクトとビジネスモデル 3.市場の成長性

1つ目は、ユニークでインターナショナルなチームです。ブライアンさんはもちろんですが、ソーシャルメディアと金融に関して熟知されている方々が集まった強力なチームだと思っています。

2つ目は、プロダクトとビジネスモデルです。アプリのユーザビリティの高さはもちろん、メインのターゲットとなる世代に特化している点が強みになっていると感じています。

また、証券会社様をはじめとしたステークホルダーと連携をとって、なかなかリーチアウトできていなかったマーケットに一緒にアプローチするなど、ステークホルダーとwin-winな関係を築けている点も素晴らしいと思います。

最後の3つ目は、市場の成長性です。「貯蓄から投資へ」という転換は、日本では長年進んでいませんでしたが、社会情勢が変化する中で、政府も投資へのシフトに本腰を入れ始めています。今後大きな動きがあることが予測される市場であり、大いに期待しています。

ソニーベンチャーズ株式会社 マネージングダイレクタージャパン 北川 純

北川:川崎さんは証券会社出身ということもあり、Woodstock社の皆さんへの期待も大きいんじゃないですか?

川崎:先ほど、ブライアンさんから金融リテラシーに関するお話がありましたが、金融教育という視点でも注目しています。私自身、現在子育て中なのですが、小学生の子供にしっかりと金融に関する知識を身につけてほしいと思う一方、子供にとってはハードルが高い内容なので苦心しています。

証券会社時代には、学校から勉強会の依頼をいただくこともありましたが、すべての学校で金融教育が行われるわけではなく、大きな課題があると感じています。

だからこそ、若い人たちが金融について学びやすいウッドストックは、教育の面でも社会貢献性が高いビジネスだと考えています。

「それは違う!」と言ってくれる仲間が財産

――会社を創業してからどのような苦労がありましたか?

ブライアンさん:限られた予算の中で、戦略を練ってクリエイティブなマーケティングを展開していくことが、苦労している点であると同時に、この事業の醍醐味でもあります。大手証券会社のアプリは、集客のための大きな予算を持っていますが、私たちは決してそうでありません。一方で、若い世代のSNSの利用時間は1日2時間を超えている人も多く、ここにチャンスがあると考えています。ウッドストックで若年層のユーザーにいかに喜んでもらうかを日々考えながら、 くじを引くと株がもらえるキャンペーンなどを展開し、プロダクト自体の面白さを高め、ユーザーからの拡散で新たなユーザーの獲得を図っています。

株式をもらえるくじのキャンペーン画面
株式をもらえるくじのキャンペーン画面

もう一つ、人材採用ですね。採用活動を続ける中で、同じ志を持った仲間を集めることがいかに難しいかを、これまで色々な失敗を通じて痛感してきました。そのおかげで、現在は採用プロセスも大幅に見直すことができ、ブランドの認知度が上がり、SIFをはじめ多くの方々が投資をしてくださることによって企業としての信頼度も高まり、レベルの高い人材が入ってくれるようにもなっています。今のメンバーは8人ですが、非常に心強く、頼りになる仲間が集まってくれています。

川崎:先日、オフィスに訪問させていただきましたが、本当に風通しがよく、一体感のあるチームだと感じました。ディスカッションでも気兼ねなく意見を言い合える風土ができており、だからこそ面白いアイデアが生まれてくるんだろうなと思いました。

ブライアンさん:私がデイリーミーティングで意見を話す時も、「それは違うと思う」と言ってくれるんです。そこからみんなでディスカッションをして、私が間違っていた時はもちろん素直に謝ります。当然、私が常に正しいわけではなく、間違うこともあります。だからこそ、仲間が素直に意見を言ってくれた時は、「あなたがいてくれて良かった」と思います。「違う」と言ってくれる仲間がいることは心強いですし、今後会社が成長していく上で欠かせないと考えています。

川崎:「あなたがいて良かった」という言葉は、すごく心に響くものがありますね。

北川:画一的なものがあるわけではないですが、スタートアップで成功されている企業の多くは、Woodstock社のように多様性を活かし合えるチームが構築されていると感じています。

ソニーベンチャーズ株式会社 インベストメント マネジャー 川崎 絵里子

日本に新たな金融カルチャーをつくり、GDPを向上させたい

――Woodstock社の今後の展望をお聞かせください。

ブライアンさん:直近では、マッチングアプリなど、同じ若年層をメインターゲットとした企業からのお声掛けをいただいており、親和性の高い企業との協業をユーザー獲得につなげていきたいです。また、在留外国人の方々にもウッドストックをご利用いただけるようになり、国籍の壁を越えた交流も増やしていければと考えています。

加えて、SIFからの出資をいただけたことをきっかけに、保険事業や金融事業などをはじめ、ソニーグループの皆様との協業を積極的に検討していきたいと考えています。

北川:特に若年層へのアクセスに対して、ソニーグループの中でも非常に関心が高まっていますので、Woodstockの成長に準じて、私たちのアセットでさまざまな貢献をしていければと考えています。長期的な展望もお聞かせください。

ブライアンさん:ありがとうございます。長期的には、ユーザーのニーズに応える形で商品を増やしていき、投資だけでなく、資産運用や管理に関するすべてのアクションをウッドストックの中で完結できるようにしていきたいと考えています。

北川:私たちとしても、日本を代表する金融メディアになっていただきたいと思っていますし、それがこの国の新しい金融カルチャーを作ることにつながっていくと考えています。

ブライアンさん:最終的には、新たな金融カルチャーを築いて、日本のGDPを向上させることに貢献していきたいですね。

(中央)Woodstock株式会社 CO-FOUNDER & CEO ブライアン・ユンさん (左)ソニーベンチャーズ株式会社 マネージングダイレクタージャパン 北川 純 (右)ソニーベンチャーズ株式会社 インベストメント マネジャー 川崎 絵里子
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連載「Sony Innovation Fund presents Remarkable Startup」では、今後も定期的にスタートアップをご紹介してまいりますので、お楽しみに!

※本記事の内容は2025年1月時点のものです。

Sony Acceleration Platformは、新たな価値を創造し豊かで持続可能な社会を創出することを目的に2014年にソニー社内の新規事業促進プログラムとしてスタートし、2018年10月からは社外にもサービス提供を開始。ソニーが培ってきた事業開発のノウハウや経験豊富なアクセラレーターによる伴走支援により、780件以上の支援を25業種の企業へ提供。
新規事業支援だけでなく、経営改善、事業開発、組織開発、人材開発、結合促進まで幅広い事業開発における課題解決を行ううえで、ソニーとともに課題解決に挑む「ソリューションパートナー企業」のネットワーク拡充と、それによる提供ソリューションの拡充を目指します。(※ 2024年12月末時点)

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