Sony Acceleration Platformでは、大企業の事業開発を中心に、さまざまなプロジェクトを支援しています。本連載では、新しい商品や技術、サービスアイデアの事業化を行う会社や起業家など、現在進行形で新しい価値を創造している方々の活動をご紹介します。
今回は、金属3Dプリンター事業に新たに取り組む、JFEスチール株式会社のプロジェクトを全3回にわたってご紹介します。
第1回目となる本記事では、JFEスチールと金属3Dプリンターとの出会い、そして事業化を進めていく過程での発想の転換に焦点を当ててお伝えします。

※上記は支援当時。現在は、本社の関連事業部に勤務中。

鉄”以外”の研究にシフトして出会った、金属3Dプリンター
増岡さん:JFEスチール株式会社(以降、JFEスチール)は、国内で2番目の売り上げ規模の鉄鋼会社です。(支援当時は)その会社のスチール研究所のサステナブルマテリアル研究部という、イマドキの名前がついた研究所に所属していました。
このサステナブルマテリアル研究(以下、サスマ研)とは、何をやっているかを少し説明します。

JFEスチールは鉄鋼会社なので、自動車のドアやボンネット用の鋼板はもちろん作っているのですが、電気自動車の駆動モーターに使われる高機能な電磁鋼板も作っています。また、電子回路基板に使われる磁性材料(電磁鉄粉、フェライト)、放熱材料(窒化ホウ素)及び電池材料(負極材、正極材)といった高機能な粉末(以下、機能粉)も製鉄所の中で鋼板を作る過程に出る副産物やエネルギーを有効活用しグループ会社とともに作っています。
ガソリンエンジン車から電気自動車へのシフトが進む中で、JFEグループの機能粉の価値が高まっており、私たちスチール研究所では「鉄(鋼板)の研究だけやっていて良いのか?」という思いが強まり、持続可能な社会に貢献する機能粉及びリサイクル技術などの研究開発を行うために設立されたのが、このサスマ研です。
私自身、11年ほど鋼板の表面処理に関する研究開発を担当していましたが、機能粉の研究開発に魅力を感じサスマ研に異動しました。今日お話しする金属3Dプリンター用鉄粉は、JFEスチールの鉄粉事業における新規用途の一候補として着目しています。
JFEスチールの鉄粉は焼結部品(自動車ギア部品など)の主原料ですが、自動車の電動化により鉄粉消費量の減少が見込まれており、鉄粉の新規用途開拓が急務となっています。金属3Dプリンターは今まさに普及が進む新しいデジタル製造技術であるものの、バリューチェーンは未確立で顧客像も不明瞭なため、金属3Dプリンター用鉄粉の早期事業化のためにSony Acceleration Platformの伴走支援をお願いしました。
「安価な鉄粉生産」から「設備産業の病院」へ、アイデアの飛躍
増岡さん:今回Sony Acceleration Platformから支援いただいた際のアクセラレーターである中田さんと取り組んでいた最初の頃の話です。当時金属3Dプリンターの粉が、