2023.05.26
Sony Acceleration Platform 新規事業の基礎知識

PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)とは?意味やPMとの違い、役割について解説

企業や組織における新規事業の立ち上げ時など、さまざまなプロジェクトで、PM(プロジェクトマネージャー)を支援するPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)を設置するケースがあります。PMOとはどのような役割を持つのか、導入するとどのようなメリットがあるのか、PMとの意味や仕事内容の違いなども踏まえて解説します。

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1.PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)とは

PMOとはProject Management Officeの略で、企業や組織において、個々のプロジェクトのマネジメントを横断的に支援する事務局や構造システムを指します。PMOは組織内に専任の部署として設置されることもあれば、外部の専門会社にPMO業務を委託することもあります。

1-1.PMとの違い、関係性は?

PMは一般的に、個々のプロジェクトの総責任者であり、リーダーとしてプロジェクトに関するあらゆる局面で正確かつスピーディに意思決定していく役割を担います。
一方、PMOはPMが意思決定しやすいように有用な情報を集め、関係各部署と連絡・調整を行う組織で、PMを支援する立場と言えます。

 

2.PMOの役割

PMOの仕事は、PMが多忙な業務の中で常に的確な意思決定ができるように、PMの業務の一部を担い、プロジェクトの成功に向けて支援することです。主に以下の役割があります。
●PMのサポートをし、プロジェクトをスムーズに進行させる
●プロジェクトの人的リソースやコストの調整
●PMやメンバーの人材開発
●コンサルティング
●PMO組織のバリエーション

それぞれの内容について解説いたします。

2-1.PMのサポートをし、プロジェクトをスムーズに進行させる

プロジェクトの規模が大きくなればなるほどPMの業務も増加するため、すべての工程にPMが目を光らせ、管理することは不可能に近いと言えます。PMOはPMの目が行き届かない部分のコスト・スケジュールなどを管理し、PMをサポートします。業務に伴って生まれる多種多様な事務処理やリスク管理、トラブルの処理や未然防止策の検討などもここに含まれます。

2-2.プロジェクトの人的リソースやコストの調整

社内のPMO部署の場合は、社内で進行中の複数のプロジェクトを踏まえて、各プロジェクトに必要な人材を配置し、コスト管理を行うことが役割のひとつです。外部のPMO組織の場合は、プロジェクト全体を俯瞰することで必要な人材を判断し、コストを考慮して派遣することも可能です。

2-3.PMやメンバーの人材開発

プロジェクトの完遂という目標のため、PMOが人材開発を担って、最適なプロジェクトチームに整えることも役割の1つです。たとえばPMに必要な研修や教育を用意することや、プロジェクトメンバーがそれぞれ能力を発揮できるよう、必要な知識・スキルの習得をサポートすることなどがPMOの役割です。

2-4.コンサルティング

PMは社内から優秀な人材が選ばれるケースが多いと言われていますが、PM1人があらゆる分野やスキルに精通していない場合もあり、どうしても得意不得意が生じます。そこでPMOはPMが苦手とする部分を補完し、時にはPMが持っていない専門知識や他業界での経験などを踏まえて助言します。外部のPMOの場合、社内の人材だけでは思いつかないような視点や課題解決策が提示されるケースもあります。

2-5.PMO組織のバリエーション

PMOの形態には、「支援型」「コントロール型」「指揮型」の3つがあるとされています。
「支援型」はPMのサポートに務め、文書やマニュアルなどのドキュメント作成、新規メンバーへの教育などを担当します。「コントロール型」は支援型PMOの業務に加えて、プロジェクトが予定どおり進捗しているかどうかを管理し、必要に応じて問題の解決も担当します。「指揮型」はプロジェクトにPMを派遣し、プロジェクトの監査を行うなど、プロジェクト全体を統括する役割を担うものです。

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3.PMOの導入を阻む要因

PMOはすべてのプロジェクトに配置されるわけではなく、中にはPMO導入は不要と判断されるプロジェクトも存在します。では、どのようなケースでPMOの存在によるメリットよりもデメリットが大きいと判断されるのか、説明します。

3-1.デメリットと判断されるのはこのようなとき

プロジェクトによっては、「PMOを配置すると人件費が増加する」「PMOの機能はプロジェクト管理ツールで代用できる」など、コスト面からPMO配置に迷われるケースがあります。実際、予算があまり潤沢ではない小規模プロジェクトではPMOを配置しないこともあるようです。また、一般的にPMOにはプロジェクト経験が豊富な人材が就くことが多いため、「PMや現場のメンバーが委縮してしまう」あるいは反対に「依存し過ぎてしまう」ケースもあると言われています。PMOは組織を横断的に管理し、プロジェクトの指揮官であるPMを支える監視役です。PMOの役割を正しく把握することが、PMO導入によるメリットの理解に繋がります。

3-2.良いPMOとは

PMOはプロジェクトに関する知識や経験、スキルを備えていることはもちろん、PMやメンバー、協力企業などと積極的にコミュニケーションを取り、現場の潤滑油の役割を果たす人材が理想です。時には、ネガティブな情報を正直に上層部に報告しなければならない場合もありえます。しかし、そうした役割も含めて、PMOはプロジェクトの屋台骨となりPMを支え、PMの手が回らない事務処理やトラブル処理を引き受けることが求められます。PMOが進捗管理などプロジェクトの特定分野の管理業務に注力し過ぎると、プロジェクト全体の課題や他分野の状況を把握できず、現場との間に軋轢を生む可能性があります。こういったことが起こらないよう、広い視野でプロジェクトを見守る姿勢がある人、メンバーとともに課題に取り組み、考える姿勢がある人が望まれます。

3-3.PMOを導入すべきケースとは?

一般的に大規模プロジェクトになると、業務内容が多岐にわたり、PMがプロジェクトの全工程に目を行き届けることが難しくなることも少なくありません。業務過多にもなりやすく、足りない部分をPMOが補佐すると良いとされています。また、PMは社内から抜擢されて就任するケースが多いですが、必ずしもプロジェクト経験が豊富な人材とは限りません。PMが経験不足であれば、知識やスキルを補い、PMOが補完することで、プロジェクトのスムーズな進行につながりやすくなります。

 

4.PMO導入のメリット

PMOを導入することで得られるメリットは、以下が挙げられます。

4-1.現場、PM、企業間をつなぎ、客観的な視点で支援できる

PMOはプロジェクトチームとは一歩距離を置いた立場で、経営戦略に基づきプロジェクト全体を俯瞰するため、プロジェクトの現状を客観的に分析して、進捗状況の「見える化」などを推し進めることができると言われています。また、豊かな経験と広い視野を備えたPMOなら、現場、PM、企業の上層部、協力企業などの関係者間のコミュニケーションをサポートしていくことも可能です。

4-2.現場の負担軽減につながる

PMOが事務処理や研修、リスク管理、トラブル解決などの業務を手伝うことで、PMやメンバーは本来の業務に集中でき、プロジェクトの質の向上につながりやすくなります。また、技術面の知識を持つPMOであれば、PMやメンバー、協力企業と技術に関連したコミュニケーションも取りやすく、現場の状況を経営陣に理解しやすい形で報告することも可能になります。

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5.PMOにおける職種

PMOには役割に応じて次のような職種があります。

5-1.PMOアドミニストレータ

プロジェクトマネジメントに関する社内プロセスを円滑に進めるため、主に事務作業や管理業務を担います。データの収集と更新、メンバーへの共有、会議日程の調整と手配、経費精算などが主な業務です。

5-2.PMOエキスパート

各プロジェクトの品質の標準化を担う職種で、プロジェクト環境の整備やルールの策定、プロジェクトに関する各種分析、ツールの導入検討、人材開発などを担当します。PMOアドミニストレータが収集したデータを分析するのもPMOエキスパートの業務です。

5-3.PMOマネージャー

PMO組織の責任者としてマネジメント業務全体を担当します。PMO組織戦略の策定、PMOメンバーの教育、プロジェクト環境やルールの維持・管理などが主な業務です。

 

6.PMOに向いている人とは?

PMOに向いている人は、コミュニケーション能力が高く、プロジェクト管理のスキルと経験を持ち、客観的視点で全体を俯瞰できる人材です。PMOはプロジェクトマネージャー(PM)を支援し、プロジェクト全体の調整や管理を行う重要な役割を担うため、特定のスキルセットと素質が必要です。

具体的には、以下のようなスキルを持つ人がPMOに向いています。

●優れたコミュニケーション能力
●問題発見・解決力
●タイムマネジメント能力
●調整力
●客観的な視点
●プロジェクト経験
●潤滑油としての役割意識

単なる管理者ではなく、チームの「潤滑油」として機能し、プロジェクトの成功に貢献できる人が理想的なPMOに向いている人材と言えるでしょう。

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7.PMO業務を担う人に求められるスキル

まず、日頃からPMやメンバーと会話を交わし、プロジェクトを自分事として捉え、メンバーと同じ目線に立ってチームの課題をともに考えることができるコミュニケーションスキルが必須です。そのうえで、プロジェクトの課題の発見力や解決力、進捗状況を的確に管理できるタイムマネジメント能力、企業の上層部や各プロジェクトチーム間、外部組織とのやりとりを進められる調整力などが求められます。

 

8.PMOの関連資格

PMOで活動するために必須の資格はありませんが、知識や能力を証明するための資格は存在します。
一般社団法人日本PMO協会が運営する「プロジェクトマネジメント・アソシエイト認定資格」は、IT業界などのプロジェクトの現場業務において必要な知識と技術を確認し、認定するもので、PMO業務の入門資格という位置づけです。その上位資格が「PMOスペシャリスト認定資格」で、「プロジェクトマネジメント・アソシエイト認定資格」合格の2年後に受験が可能です。「PMOスペシャリスト認定資格」では、PMOの役割や事例、導入プロセスなどの知識が必要とされています。他にアメリカの非営利団体であるPMI(Project Management Institute)が主催する「プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル(PMP®)」という国際資格もあります。

 

9.PMOを社外にアウトソースする方法も

PMOの役割を担うにはプロジェクトマネジメントの豊富な経験と知識を持つことが必要なため、社外の専門組織に依頼することが珍しくありません。Sony Acceleration PlatformはPMOに関しても実績とノウハウを積み上げています。
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Sony Acceleration Platformでの事例をご紹介します。

◆ Sony Acceleration Platformは新規事業開発に関わるプロジェクトでPMをサポート
Sony Acceleration Platformでは新規事業開発における「PM育成支援」や「PMO代行サービス」を提供しています。支援はプロジェクトごとに必要とされる工程をお客様のご要望に合わせる形で行っており、まずはお客様のご要望をヒアリングするところからスタートします。

【事業紹介】ライオン株式会社 事業化のための課題整理、マーケティングやコミュニケーションデザインなどを支援
Sony Acceleration Platformはライオン株式会社が手掛けるお口のフィットネスサービス「ORAL FIT(オーラルフィット)」の開発プロジェクトに対し、アクセラレーターが支援。プロジェクトメンバーが感じていた「コアターゲットに対する有効なマーケティング施策を絞り込めていない」という課題をSony Acceleration Platformが紐解き、デザイン面でのコミュニケーション設計を提案。ターゲット層に「ORAL FIT」を自分事として受け取ってもらえる内容を訴求しました。他にもペルソナやカスタマージャーニーマップの整理など、第三者視点でプロジェクトを分析し、必要な部分をサポート。2022年11月の一般発売に至りました。

【事例紹介】SOMPOリスクマネジメント株式会社 プログラムの制度構築や運用の支援、ビジネスモデル構築トレーニングを提供
Sony Acceleration Platformでは2022年度より、損害保険ジャパン株式会社とSOMPOリスクマネジメント株式会社がメガトレンド分野での新規事業開発を目指すSOMPO Acceleration Programを支援しています。SOMPO Acceleration ProgramはSOMPOグループとスタートアップ企業の共創での新規事業開発を支援するプログラムで、企画アイデアの募集と選定、社内からのカタリストの募集と選定、カタリストやプロジェクトメンバーへの研修などを実施しています。Sony Acceleration Platformは豊富な新規事業開発経験をもとに、企画アイデアを募るビジネスコンペのテコ入れやStage Gate Systemと事務局運営業務を効率化するWebアプリ「StartDash Office※」の導入、トレーニングの企画・提供などを行い、プログラムの進化をサポートしました。

【StartDash Officeとは】
これまでのソニーの経験とノウハウを結集した、アイデア/ビジネスコンテストの開催を支援するWebアプリです。 コンテストの設計、募集ページの作成から審査まで、アイデア/ビジネスコンテストの開催に必要な機能が一通り揃っています。 社内だけでなく社外からの応募にも対応しています。


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Sony Acceleration Platformは、新たな価値を創造し豊かで持続可能な社会を創出することを目的に2014年にソニー社内の新規事業促進プログラムとしてスタートし、2018年10月からは社外にもサービス提供を開始。ソニーが培ってきた事業開発のノウハウや経験豊富なアクセラレーターによる伴走支援により、860件以上の支援を27業種の企業へ提供。
新規事業支援だけでなく、経営改善、事業開発、組織開発、人材開発、結合促進まで幅広い事業開発における課題解決を行ううえで、ソニーとともに課題解決に挑む「ソリューションパートナー企業」のネットワーク拡充と、それによる提供ソリューションの拡充を目指します。(※ 2025年5月末時点)

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