2024.08.30
Sony Acceleration Platform 新規事業の基礎知識

PoCはどうやるの?意味や進め方を4つのステップで解説

PoCとは?意味と重要性

 PoCとは「概念実証」とも訳され、新しい製品・サービスに用いるアイデアや技術、理論の実現可能性や事業性を検証するものです。

PoCの意味など詳細はこちらの記事をご覧ください
PoC(概念実証)とは?メリットやデメリット、成功のポイントを解説

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PoCとPoVの違いとは?

PoCとPoVは新規技術導入時の検証プロセスとして重要ですが、その目的は異なります。PoCは「Proof of Concept(概念実証)」の略で、新しいアイデアや技術の実現可能性を検証するプロセスです。一方、PoVは「Proof of Value(価値実証)」の略で、その技術を導入することでどのような価値が生まれるのかを見極めるプロセスです。PoCが「実現できるか」を検証するのに対し、PoVは「価値があるか」を評価します。

PoCとPoBの違いとは?

PoCとPoBはどちらも検証フェーズですが、視点が異なります。PoCが技術やアイデアの実現可能性を検証するのに対し、PoBは「Proof of Business(ビジネス実証)」の略で、ビジネス面での実現可能性や収益性を検証します。PoCが技術的な観点から「できるか」を検証するのに対し、PoBは「ビジネスとして成立するか」「採算が取れるか」といった経済的・事業的な観点から検証するプロセスです。

 

事業開発におけるPoCとは

新規事業開発には多額の資金と時間と人的リソースが必要です。しかし、ビジネスアイデアを育てて新規事業として社会実装させるまでの道のりは険しく、結果としてコストや時間が無駄になる事例が少なくありません。PoCは新規事業開発の比較的早い段階で「そのアイデアは実現可能か」「ユーザーにとってどんな価値があるのか」「その事業は継続性があるのか」を検証することができ、コストや時間の無駄を防ぎます。また、PoCを実施することでプロジェクトの改善点が見つかり、早期に改善が図れること、投資家や外部企業へプロジェクトの内容を告知でき、周囲の理解が深まるメリットがあります。

PoCはさまざまな業界で活用されています

もともとPoCはシステムの検証を繰り返すIT業界や、患者への大規模臨床試験の前に何度も小規模な臨床試験を繰り返す医薬品業界などに欠かせない手法として活用されてきました。AIの活用や製品のIoT化が進む近年、製造業界や小売業界、交通・物流業界など幅広い業界でPoCが行われるようになり、新規事業開発の早い段階で事業の実現性を見極める潮流が生まれています。

PoCの具体的な進め方、手順について

PoCの以下のステップで実施します。ステップごとのポイントをわかりやすく解説します。

PoCの実施ステップ

STEP.1 目的・目標の明確化

何のためにPoCを実施するのか、ゴール(目的・目標)を具体的に定めます。事業の実現可能性を探るのであれば、どのような項目を設けるべきか。ユーザー価値を探るのであれば、どのようなユーザーを対象にするべきか。目的・目標が具体的かつ明確であればあるほど、検証の精度が高まります。

STEP.2 具体的な検証内容を検討、決定

業界やプロジェクトにより検証したい内容は異なりますが、PoCでは主に以下のポイントに絞って検証・評価することが多いといわれています。

価値

その新規事業はユーザーにどのようなベネフィットを生み出すのか。その事業により、ユーザーのどのような課題が解決されるのか。生活の利便性がどれほど高まるのか。さらにPoCでユーザーテストを行う場合はどのようなユーザーを集めるべきか、検討する必要があります。また、定量的なデータだけでなく、使用感やデザイン所感など定性的なデータも集めると、今後の開発に活かせます。

実現可能性

技術的に実現可能か。そのアイデアや技術の実装されたものが消費者に問題なく受け入れられるのか。その製品・サービスを実際にユーザーが問題なく利用できるのか。社会実装までにどれほどのコストと時間がかかるのか、など「実現可能であるかどうか」に焦点を絞ってさまざまな面から検討します。

事業性

費用対効果やコスト構造などを分析し、社会実装後もその事業を継続可能かどうか検証します。「継続するためにどのような環境と人的リソースが必要か」「そこにどれほどのコストがかかるのか」など、将来を見据えた検討が必要です。

STEP.3 検証の実施

STEP.1、2の準備が整ったら、検証の実施に移ります。検証方法には、以下のような手法があります。それぞれ検証したい内容に合わせて実施計画を策定し、実行チームを組む必要があります。できるだけのスキルのある人材を集め、リアルな現場に近い環境で実施するのが理想です。

検証の手法:プロトタイプ型

プロトタイプを製作し、本番に近い環境で試し、改良を繰り返すものです。国内では製造業などを中心に、導入されるケースが多い型です。

検証の手法:カスタマーリサーチ型

特にプロトタイプやMVPなどを用意せず、アイデア・機能・用途・デザインなどを企画書にまとめ、テストユーザーに感想を求めるものです。ヒアリングを通じて、「その製品・サービスを利用したいか/したくないか」「その理由は何か」「どのような機能があってほしいか」などの情報を集めていきます。

検証の手法:体験型

簡易な試作品を用いて、ユーザーテストの実施や、イベントなどで実際に体験してもらうものです。機能やデザインなどを手軽に検証できますが、実装までに製造プロセスにおいて実現可能性を検証するPoCを行う必要があります。

STEP.4 検証結果を評価する

STEP.3で獲得したデータをもとに、「価値」「実現可能性」「事業性」について評価します。STEP.1であらかじめ設定した目標にどれだけ達成しているか、検証結果を客観的に評価しなくてはなりません。結果、新たな課題が見つかった場合は、課題を解消後に再度PoCを行い、新製品・新サービスの精度を上げていきます。また、「実現可能性が低い」「事業を継続するのが困難」など、新規事業そのものにネガティブな評価が出た場合は、事業からの撤退も視野に入れます。

PoCの3つのメリット

PoCには、以下の3つのメリットがあります。
・新しい取り組みに対するリスクの抑制ができる
・開発でのコスト削減につながる
・投資家や外部企業へ判断材料を提供できる

それぞれ解説していきますので、ぜひ参考にしてください。

新しい取り組みに対するリスクの抑制ができる

PoCの最大のメリットは、新規プロジェクトの失敗リスクを大幅に低減できる点です。本格的な開発を始める前に、採用予定の技術やアイデアが実現可能かを事前に検証することで、開発途中で技術的な問題に直面するリスクを回避できます。これにより、プロジェクトが途中で頓挫するといった事態を防ぎ、結果として開発全体の成功率を高められます。

開発でのコスト削減につながる

PoCを実施することで、開発コストの大幅な削減が可能になります。机上の空論で考えたアイデアを検証せずに本格開発に進めた場合、途中で実現不可能だと判明すると、それまでに投じた人員や費用がすべて無駄になってしまいます。しかし、PoCで事前に実現可能性を確認しておけば、無駄な開発を避け、効率的なリソース配分が可能になり、結果的に開発全体のコスト削減につながります。

投資家や外部企業へ判断材料を提供できる

PoCは、投資家や外部企業に対して有力な判断材料を提供します。PoCの結果は、新しい技術やアイデアが実現可能であることを示す具体的な証拠となり、計画の次段階への進行や投資の可否を関係者が判断する際の重要な基準となります。とくに新規事業の立ち上げ時には、PoCで検証したデータを元に製品やサービスのニーズ、技術的な実現性、採算性などを客観的に示すことで、投資判断の材料として活用できます。

 

PoCを成功させるためのポイントは?

PoCを成功させるには、まず目的・目標を明確にすること。目的・目標が明確であればあるほど、PoC自体にブレが生じにくくなります。

「PoCそのものが目的化してしまう」「PoCの繰り返し次の開発フェーズになかなか進めない」など、検証の回数によりコストが増えるいわゆる「PoC貧乏」と呼ばれる失敗例は、PoCのゴールが明確になっていないことが要因とされています。また、スモールスタートで抽出された課題に応じてPoCを繰り返し、課題を解消していきます。

まとめ

「PoCをどのように進めたらよいのかわからない」「PoCに必要なリソースが揃わない」など実施するうえでの悩みを抱えている場合は、事業検証のスペシャリストにサポートを依頼することもおすすめします。

 新規事業にまつわる、こんなお悩みにSony Acceleration Platformがサポートします

新規事業開発は不確実な要素を多く抱えたまま、判断を迫られるシーンの連続です。Sony Acceleration Platformは、少しでも不確実要素を減らしたい開発担当者に寄り添い、事業化までの道のりをサポートします。

お悩み:事業アイデアやビジネスモデルの検証方法がわからない

 新規事業開発には、開発や投資を進めるべきか、それとも撤退するべきか、決断しなくてはならないタイミングがあります。そのために事業の実現可能性を探るPoCを実施するわけですが、検証方法がよくわからなかったり、検証はしたものの判断できるほどの結果が得られなかったりするケースも少なくありません。Sony Acceleration Platformの「事業性検証支援」では、事業性検証の計画策定から実行まで一気通貫で支援を提供します。PoCの目的・目標の設定、スケジュールの作成など、PoCを効率的・効果的に進めるためにSony Acceleration Platformのアクセラレーターが伴走します。

詳しくはこちらをご覧ください>>Sony Acceleration Platformのサービス:事業性検証支援

お悩み:投資判断のつかない事業アイデアや技術がある

新規事業のアイデアや技術の投資をすべきかどうか、企業にとって判断が難しいケースが少なくありません。Sony Acceleration Platformでは市場性や競合の分析、想定顧客へのPoCを代行する「事業性検証代行」をご提供しています。事業立ち上げ経験のあるアクセラレーターが「蓋然性(顧客が存在するのか)」「事業規模(その事業が実際に育つのか)」「優位性(競合他社に勝てるのか)」「市場性・タイミング(トレンドを捉えているのか)」の4つの視点のエビデンスをまとめ、予算策定や投資判断に役立つレポートをご提供します。

 詳しくはこちらをご覧ください>>Sony Acceleration Platformのサービス:事業性検証代行

Sony Acceleration PlatformのPoC支援事例

新規事業創出の実績豊富なアクセラレーターが依頼企業に寄り添い、さまざまなPoC支援を実施しています。支援の事例をご紹介します。

 事例紹介 PoCで改善を繰り返し、製品化に成功(京セラ株式会社)

「子どもたちの歯磨きを楽しい時間に変える」というコンセプトのもと、京セラが開発した音の鳴る歯ブラシ「Possi」。Sony Acceleration Platformは2018年10月から支援を行い、アクセラレーターのサポートのもと、ニーズ検証、商品開発、事業開発などフェーズごとに目標や期限を設定して進めていきました。特にプロトタイピングとユーザーテストではPoCによる検証を繰り返し、製品化への道のりを一歩一歩進めた結果、2021年5月、社会実装に至りました。

詳細はこちらの記事をご覧ください オープンイノベーションによる企業間連携 -Possi誕生ストーリー-

Sony Acceleration Platformでは、PoCの支援も含めた数多くの事業化の実績があります。こちらの記事PoC開発を成功させるには?Sony Acceleration Platformの PoC支援事例も紹介も併せてご覧ください。

PoCに関するよくある質問

PoCに関する疑問にお答えします。

PoC開発のメリットとは?

プロトタイピングや実証実験の前にPoCを小規模に実施することで早期に課題を発見でき、無駄なコストや時間を未然に防ぐことができます。また、本番に近い環境でPoCを実施することで社内外や投資家の理解が深まり、協力や投資を集めやすくなるメリットがあるといわれています。

PoCとプロトタイピングの違いとは?

プロトタイピングは簡単な機能やデザインのみを実装した試作品を作り、使い心地やデザイン所感などを検証しながら完成品へと近づけていくことを指します。一方、PoCは概念やアイデアを検証し、実現可能性を探るもので、一般的にはプロトタイピングの前に行われることが多いといわれます。ただし、技術的な実現性を検証するためにプロトタイプが必要な場合は、PoCの前にプロトタイプが製作されることもあります。

プロトタイピングについて詳しくはこちらの記事をご覧ください>>プロトタイピングとは?

PoCとMVPの違いとは?

 MVP(Minimum Viable Product)とは、顧客に価値提供できる必要最小限の機能を備えた製品・サービスを作り、市場やユーザーの反応を試しながら改善を繰り返す手法です。PoCの後に製作されることが多いですが、プロトタイピングと同様、PoCにMVPが必要とされる場合はPoCの工程の中にMVPを含めるケースもあります。

Sony Acceleration PlatformではPoCの豊富な知識とノウハウを蓄積しています。「PoCを効果的に進めたい」「検証方法のアドバイスが欲しい」など、PoCに関わるさまざまな悩みや疑問に経験豊富なアクセラレーターが対応いたします。まずはお気軽にお問い合わせください。

Sony Acceleration Platformは、新たな価値を創造し豊かで持続可能な社会を創出することを目的に2014年にソニー社内の新規事業促進プログラムとしてスタートし、2018年10月からは社外にもサービス提供を開始。ソニーが培ってきた事業開発のノウハウや経験豊富なアクセラレーターによる伴走支援により、850件以上の支援を27業種の企業へ提供。
新規事業支援だけでなく、経営改善、事業開発、組織開発、人材開発、結合促進まで幅広い事業開発における課題解決を行ううえで、ソニーとともに課題解決に挑む「ソリューションパートナー企業」のネットワーク拡充と、それによる提供ソリューションの拡充を目指します。(※ 2025年4月末時点)

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