Sony Startup Acceleration Program (SSAP)によるオリジナル連載「大企業×新規事業 -Inside Stories-」は、SSAPの担当者が大企業内の新規事業組織のトップにインタビューする企画です。
今回インタビューしたのは、株式会社資生堂(以下、資生堂)。資生堂では研究開発拠点であるみなとみらい地区の資生堂グローバルイノベーションセンター(以下、GIC)にて、オープンイノベーションプログラム「fibona」に取り組んでいます。fibonaは資生堂の研究員と外部のさまざまな人と知の融合から新たなイノベーションを目指しています。
株式会社資生堂 fibona プロジェクトリーダー中西 裕子(なかにし・ゆうこ)さんが語る、研究所発でfibonaが立ち上がったワケ、クラウドファンディングで話題を呼んだ意外なプロダクト、資生堂が注目する新たな領域とは?資生堂のオープンイノベーション推進組織のリアルに迫ります。
目標金額をわずか3日で達成した"食品"とは?
――fibonaから生まれたプロジェクトで、特に印象的だったものを教えてください!
最近クラウドファンディングを実施した件がちょうど2つあるのでご紹介します。
1つ目は、フィルム型サプリ「Lämmin」です。このサプリは、大事な場面の10分前に摂取することで、いきいきとした顔印象をサポートします。Lämminはクラウドファンディングを開始してわずか3日で目標金額を達成しました。
資生堂が開発している化粧品や食品の素材を応用する形で、Lämminが生まれました。自社で研究開発した美容成分シベリア人参や、温感フレーバーやショウガも採用。口の中に入れた瞬間から、温かみのある味わいとパチパチする刺激を実感いただける仕掛けになっています。
瞬時にリフレッシュできる4種のスティック状クリーム
――商品が"化粧品"ではなく、サプリという"食品"である点も新しいですね!2つ目の印象的なプロジェクトは?
もう1つは、資生堂の香料研究が生んだ「リトリートスティック」です。これもクラウドファンディングを実施し、目標金額の5倍を上回る額で成功しました。
リトリートスティックはリップクリームのような形状をしていて、手や首などにさっと塗ることで香りが楽しめます。周囲にも香らせる香水とは違って、リトリートスティックは自分がリフレッシュするためのもの。クラウドファンディングでは自然界の香りのゆらぎに着目した4種類のスティックをセットでお届けしました。
――Lämminとリトリートスティックいずれも、クラウドファンディングを行って成功を収めたのですね。
はい、これらはfibonaの活動の1つである、アジャイルに開発し市場に導入する「SpeedyTrial」に該当します。既存の研究だとローンチまでに数年かかることが一般的ですが、そのサイクルを早め、スピーディーに開発しお客さまの反応を見ることにチャレンジしました。今後も、クラウドファンディングに参加してくださったサポーターの方々を対象に体験イベントやアンケートを実施して、商品をブラッシュアップする予定です。
不安の分だけ無限の可能性がある
――ちなみに、これらの商品に資生堂のアセットはどう活かされていますか?
Lämminには、血色や血流を良くするためのライフサイエンス的な研究知見が活かされています。加えて、Lämminの効果を検証して効果データとして表すフェーズでも、それを専門領域とする方々にサポートいただきました。
リトリートスティックには、資生堂の香りの研究知見が活かされていますし、商品をスティックの形状に仕上げる点では化粧品の処方開発のノウハウが役立ちました。またリトリートスティックは、先ほどご紹介した研究所内の製造施設で製造されています。
――新たなプロジェクトが続々と生まれているfibona。中西さんにとって、新規事業につながる研究開発やオープンイノベーションを行う醍醐味は?
やはり、自由度が高く無限の可能性にチャレンジできることでしょうか。
既存事業の商品にも、いつまでにどの市場で売り上げをいくら達成するか、という制約条件の中で考える面白さがあります。一方で新たなプロジェクトを生み出す際には、最初は未来の可能性を考える必要があるので想像も膨らませやすく、チャレンジしがいがあると思っています。自由度が高すぎて不安になることも多いですが、私はそのチャレンジを楽しんでいます。
>>次回 【資生堂編 #4】人生100年時代 「美しさの定義」のイノベーションとは? につづく
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※本記事の内容は2023年6月時点のものです。