Sony Acceleration Platformは、スウェーデンのルンドにも拠点があり、ヨーロッパを中心に世界の事業開発に挑戦するあらゆる企業の皆様を支援しています。
本連載「北欧に学ぶ!イノベーションレポート」では、北欧のイノベーション文化に気軽に触れていただけるよう、Sony Acceleration Platformヨーロッパ拠点のメンバーからのレポートを日本語でお届けします!
今回の舞台はスイスです。スイスは、チョコレートや時計といった伝統産業に加え、15年連続で世界のイノベーションをリードしています。精密さ、教育、そして数十億スイスフラン規模の研究開発投資が、この小さな国を究極のイノベーション大国へと変貌させている理由を探っていきましょう。

ヨーロッパのイノベーションを語る上で、スイスは「欠かせない存在」です。スイスは15年連続で、世界知的所有権機関(WIPO)が発表するグローバル・イノベーション・インデックス(GII)のトップの座を獲得しています。この目覚ましい記録は、スイスが研究、教育、連携へのアプローチを洗練し続け、イノベーションを国のアイデンティティに深く組み込んでいることを示しています。
WIPOが発行するGIIは、「制度」「人材と研究」「インフラ」「市場の高度化」「ビジネスの高度化」「知識・技術のアウトプット」「クリエイティブ・アウトプット」の7つの分野でパフォーマンスが評価されています。スイスは、「クリエイティブ・アウトプット」で世界のリーダーであり続け、他のほぼ全てのカテゴリーでトップ5にランクインしています。人材と研究の分野では6位に位置していますが、それでも世界トップクラスの地位を維持しています。
イノベーションのために築かれた国
スイスの成功は偶然ではありません。それは、イノベーションを国家政策の一部とする意図的な努力から生まれています。研究・イノベーション推進法(RIPA)は、政府が研究への資金提供とイノベーション支援において積極的な役割を果たすことを保証しています。
これは主に以下の機関を通じて行われます。
Innosuisse(スイス・イノベーション機関)・Swiss National Science Foundation (SNSF)(スイス国立科学財団)
Innosuisseは、企業と研究機関との連携を支援することで科学ベースのイノベーションを促進しています。スタートアップ、起業家、研究者が産業界と繋がり、アイデアを市場にもたらすのを支援しています。一方、SNSFは大学での基礎研究に焦点を当て、即座の商業的成果よりも科学的理解の進歩に貢献するプロジェクトを支援しています。
両組織は、主要な重点分野を定義する国の長期的な「教育・研究・イノベーション(ERI)政策」に従っています。2025年から2028年までの現行計画では、デジタル変革、持続可能性、国際協力が優先されており、スイス政府がいかにイノベーションの目標を地球規模の課題と整合させているかが示されています。
教育と投資:成功を支える両輪
スイスは研究開発に多額の投資も行っています。2021年には、GDPの約3.3%にあたる約250億スイスフラン(約4.5兆円)を費やしました。これは、世界平均の2.5%を大きく上回ります。この支出の大部分は民間部門によるもので、167億スイスフラン以上(約3.0兆円)が研究開発に投資されました。
2024年のEYによる調査では、スイスの研究開発支出総額は340億ユーロ(約5.6兆円)を超え、米国、中国・香港、日本、ドイツ、韓国に次いで世界第6位と推定されています。
この巨額な投資は、イノベーションを前提に構築された教育システムによってさらに強固なものとなっています。国の二大旗艦大学であるチューリッヒ工科大学(ETH Zurich)とローザンヌ連邦工科大学(EPFL Lausanne)は、それぞれ世界第11位と第33位にランクインし、「研究影響力」では両校とも世界トップ10に入っています。
これら二大巨頭の他にも、スイスには10の大学と9の応用科学芸術大学があり、実践的な学習と応用研究に焦点を当てています。これらの学校の多くは、企業と直接連携して実際の研究開発プロジェクトに取り組んでおり、その多くはInnosuisseの資金提供を受けています。こうした取り組みが一体となり、国のイノベーション・エコシステムへ、有能で探求心旺盛な人材を絶え間なく供給し続けています。
繋がるエコシステム
スイスのイノベーション・ネットワークは、世界的に非常に高度なものと評されています。チューリッヒ、ローザンヌ、バーゼル、ジュネーブといった都市には、インキュベーター、アクセラレーター、イノベーション・パークが密接に張り巡らされ、スタートアップ、大学、既存企業を繋いでいます。
この仕組みのの多くはInnosuisseと密接に連携しており、学術界とビジネス界との間にスムーズな経路を生み出しています。ETH ZurichとEPFL Lausanneはそれぞれ独自のインキュベーターを運営し、学生や研究者が学術プロジェクトを実行可能なベンチャーへと転換する機会を提供しています。
その他の主要なハブには、Venturelab、Venture Kick、Kickstart Innovationがあり、資金提供、メンターシップ、企業とのパートナーシップを提供しています。このような国が築く強力な教育基盤と一貫した政策指導のおかげで、これらのイニシアチブは孤立した努力ではなく、すべてのアイデアが成長する可能性を保証する、協調的な国家フレームワークの一部となっています。
民間企業のリーダーシップ
とはいえ、引き続きスイスのイノベーションの最大の原動力は、民間企業です。企業は研究開発に167億スイスフラン以上(約3.0兆円)を投資し、医学、オートメーション、テクノロジー、デザインの分野でブレイクスルーをもたらしています。
主な貢献企業(一部):
ロシュ(Roche)
2024年に研究開発に161億ユーロ(約2.7兆円)を投資。現在、バーゼルに約1,000人の科学者を収容する新しい研究・早期開発センターを建設中です。
ノバルティス(Novartis)
2024年に93億ユーロ(約1.5兆円)を投資し、そのうち42億ユーロ(約6,930億円)をスイス国内で投資しています。バーゼルだけで約5,000人の研究開発専門家を雇用し、スイスの大学と120以上の連携を維持しています。
ネスレ(Nestlé)
2024年に研究開発に18億ユーロ(約2,970億円)を投資。2025年5月には、次世代センサー、ロボティクス、バーチャルリアリティシステム、AI技術に焦点を当てた新しいディープテックセンターをオルブの拠点に開設しました。
ABB
2024年に14億ユーロ(約2,310億円)を投資。オートメーションと電化のリーダーとして、ABBはスイスのトップ特許出願人の1つにランクインし続けています。
これらの企業は、研究投資、連携、長期計画が、いかにスイスのイノベーション力の基盤を形成しているかを示しています。
絶え間ない進化の必要性
イノベーションはもはや「選択肢ではなく、企業の存続に不可欠な要素」です。適応に失敗した企業は、その存在意義だけでなく、人材、パートナー、市場での地位を失うリスクがあります。
私たちSony Acceleration Platform Europeの使命は、実用的、創造的、かつ構造化された手法を通じて、組織がイノベーションを起こし適応する能力を強化できるよう支援することであり、上記の課題に精通しています。
私たちは、ヨーロッパ全域において創造性とアイデア創出から、ビジネスモデリングに至るまで、イノベーション戦略の策定においてサポートしています。アイデア創出やワークショップを通じて、組織が新規事業のコンセプトを作成するところから実行へと移行するために必要なスキルと自信を築くお手伝いをします。
イノベーションは、人々、アイデア、リソースが共通の目的に向かって連携したときにこそ成功します。Sony Acceleration Platformがみなさまの組織にどのように貢献できるか、詳細については、ぜひお問い合わせください。