2025.10.16
BOOSTERS 100

株式会社ソニー・ミュージックソリューションズ エンタメ領域のバウンダリースパナーに

「BOOSTERS 100」は、Sony Acceleration Platformでイノベーションを阻む課題を共に解決してくださる企業・団体等をご紹介する連載企画です。Sony Acceleration Platformでは、特定の業界や業種に関する知識や技術を有する専門家を「ソリューションパートナー(以下、ソルバー)」として登録し、共にさまざまなソリューションを提供しています。

今回は、ソニーグループの企業の中で、エンタテインメント(以下、エンタメ)に関する課題解決をソルバーとして引き受ける株式会社ソニー・ミュージックソリューションズの取り組みについて、株式会社ソニー・ミュージックソリューションズのPR本部 本部長の井手とSony Acceleration Platformのアライアンス担当の高橋に話を聞きました。

 

井手 諭

株式会社ソニー・ミュージックソリューションズ ブランドPR本部 本部長

新卒でソニー・ミュージックエンタテインメントに入社。主にレーベル事業の宣伝業務に長らく従事。各種メディアへのアプローチ・関係構築を得意とし、豊富な人脈を活かしたエンターテインメント領域でのPR実績多数。現在、ソニー・ミュージックソリューションズ ブランドPR本部にて、広報PR戦略の企画立案・実施/ブランディング/メディア対応/イベントの企画立案などを中心に担当。

 

高橋 拓也

ソニーグループ株式会社 Business Acceleration and Collaboration 部門 Open Innovation and Collaboration部 Alliance and Partnership Team 統括課長
Sony Acceleration Platform アクセラレーター

大手通信キャリアにて、本業の通信事業を軸としたエコシステムの構築に向け、新たなライフデザイン事業領域に従事。特にコマースビジネスでは、アメリカの大手テックカンパニーをはじめとした企業とマーチャンダイジング(商品計画・商品化計画)を軸としたアライアンスに取り組む。その経験を活かし、ソニーグループ株式会社では、Sony Acceleration Platformにてアライアンスやパートナーシップを統括し、社外とソニーグループとの新結合も推進。

 

line

 

「バウンダリースパナー」を知ったことがきっかけ

――ソニー・ミュージックソリューションズは、どのような会社でしょうか。

井手:ソニー・ミュージックソリューションズ(以下、SMS)という会社は、ソニーミュージックグループの中の一つのカンパニーです。
ソニーミュージックグループには、大きく分けて3つの軸があります。一つは音楽レーベル事業やアーティストマネジメント事業を行うアーティスト&ミュージックビジネスグループ、それからアニプレックスなどのアニメ関連事業・キャラクターを中心としたIPビジネスを行うビジュアル&キャラクタービジネスグループ。そして、それ以外のエンターテインメント領域でのソリューションビジネス全般を担当するエンタテインメントソリューションビジネスグループの3つです。我々SMSはそのエンタテインメントソリューションビジネスグループに属しています。

――今回Sony Acceleration Platformのソリューションパートナーに参画いただいたきっかけを教えてください。

井手:ちょうどSony Acceleration Platformが昨年開催していた「Sony Open Innovation Day 2024」に参加させていただいたのがきっかけです。そこで、Sony Acceleration Platformに出会い、新規事業をいろいろとサポートされているのを知りました。
イベントには私一人で参加したのですが、社長の十時のプレゼンテーションの中で「バウンダリースパナ―」(※)の話に非常に感銘を受け、ワクワクしました。そこで、Sony Acceleration Platformの担当と名刺交換したのが始まりです。
当初は、私自身が新規事業にチャレンジしたいという思いがあり、そのサポートをお願いしたいと思って話し始めたのですが、私どもの事業を紹介しているうちに「SMSさんでは色々なPRもできるんですか?」と聞かれました。
「それならば、私たちの持っているエンタメ領域でのノウハウと掛け合わせて何かしら協業できませんか?」と話がまとまり、お互いの思惑が一致して、今のような組み方をさせていただいています。

※バウンダリースパナー:異なる組織間の境界を越え、組織や個人を繋ぎ、知識や活動を共有して、組織行動に影響を及ぼす人

――実際にパートナーに参画されてみていかがでしょうこか。

高橋:私たちがお客様をご支援している中で、「ソニーグループの企業とつながりたい」というニーズは非常に多いです。特にエンタメ領域において、ソニーの多様なIPやコンテンツを活用したいというお客様のニーズに応えられているところが大きいなと感じています。

井手:私どもSMSは、やはり普段エンタメ領域の中だけで課題解決を考えていることが多く―。もちろん、不動産や金融といった、エンタメとは少し遠い業界の方とはCMの楽曲タイアップという形でご一緒することはありましたが、事業という単位でエンタメ領域ではない事業会社の方と深く接点を持つことはあまりありませんでした。
今回Sony Acceleration Platformのソリューションパートナーになったことで、思った以上に多くの企業様がエンタメ領域で新規事業を立ち上げたい、既存事業のリブランディングを図りたいというニーズをお持ちなのだなと、強く実感しています。

高橋:通常、ソリューションパートナーの皆様には、既存でお持ちのソリューションをご提供いただきますが、SMSさんとは、Sony Acceleration PlatformのソリューションとSMSのソリューションを融合した共同ラインナップ開発まで取り組んでいます。

 

「音楽」に留まらない多岐にわたるエンタメで多彩な解決策を提供

――皆様、どのような経緯でご相談されるのでしょうか。

高橋:「ソニーのエンタメ領域に興味があるが、どこに相談すればいいかわからない」という企業様が多く、まずSony Acceleration Platformがお問い合わせを頂いた企業様の課題や実現したいゴールを一緒に整理をしてSMSさんにご紹介する、という流れが多いです。
ソニーグループは音楽だけでなく、ゲーム、映画、アニメと多様なエンタメ領域におけるコンテンツ・IPを持っていますので、さまざまなご相談に対応することができます。

井手:そうなんです。そのため「ソニーミュージック」と付いていますが、ミュージックは提供できるソリューションの一部分で、それ以外の領域もかなり幅広くやっています。クライアントの企業様にご説明すると、「え、そんなこともやられているんですか?」と、結構びっくりされますね。
例えば、音楽レーベルにはYOASOBIから坂道シリーズまで多くのアーティストが所属していますし、タレント事務所もあります。ソニー・ミュージックエンタテインメントの子会社であるアニプレックスは『鬼滅の刃』シリーズなどの制作を手掛けていますし、アニプレックスの子会社であるミリアゴンスタジオ では、今年話題となった映画『国宝』の制作を手掛けています。またキャラクターでは、PEANUTSやセサミストリートなどの日本におけるライセンス管理も行っています。本当に幅広く対応できると自負しています。

――実際にSony Acceleration Platformとの取り組みがや検討が進んでいる事例を教えてください。

高橋: Sony Acceleration Platform からお繋ぎをした事例は、「旅行業界」「鉄道」「金融」「広告」「不動産」など幅広い業界で取り組みや検討が進んでいます。テーマも「地方創生」「インバウンド」「推し活」「eスポーツ」「ファンクラブ」など多岐にわたります。

――コンテンツの中身自体も制作できるのですね。

井手:はい。SMSは本当にさまざまなことを手掛けていまして、イベントの運営・制作はもちろん、ブースの空間設計もできます。社内には一級建築士も在籍しています。ライブツアーのグッズ制作や、ファンクラブの運営もワンストップでできます。とある企業様が運営する水族館のファンコミュニティ形成をお手伝いした実績もあります。
また、ある鉄道会社様とは、地方創生を活性化させるプロジェクトを進めています。列車を貸し切って、私たちが抱える声優やアーティストのライブ空間にしたり、ファンとの接点の場にしたりしたいというご要望があり、今まさに具現化に向けて Sony Acceleration Platform と進めています。

高橋:今後さらに日本のエンタメのグローバル展開を強化するにあたり、我々が出資しているベンチャー企業にも参画頂きながら、国境や地理的制約を超えて世界中のファンが同時に参加し、体験ができるメタバースなどのバーチャル空間におけるIP・コンテンツ展開も一緒に検討を進めています。音楽分野でのアーティストに加え、アニメ、お笑い、落語などの日本文化にも着目し、幅広い分野でクリエイティブな話題で盛り上がっていて、ソニーらしいなって感じています。

 

想定外の領域からの相談が思いがけないアイデアに

――鉄道会社や旅行会社との取り組みは、エンタメとの親和性が高いとイメージしやすいのですが、一見まったくエンタメと結びつかない企業との取り組みもされているのですね。

井手:そうですね。例えば今、「推し活」が大きなキーワードになっています。いくつかの保険業界の方からは「推し活に関する保険」を作れないかというご相談があります。「単にライブを企画する」といったエンタメの提供の仕方だけでなく、クライアント企業様の自前のサービスをどうエンタメと掛け合わせて相乗効果を生み出していくかということを考えています。

――さまざまな業種の企業様が「エンタメを活用して何かやりたい」と考えた時、お問い合わせを頂く企業様が共通して抱えている課題は何でしょうか。

高橋:業界は違えど、多くの大企業様が日本の人口減少という社会課題に直面しています。その打開策として、客数の観点ですと、海外に打って出るか、国内であればこれまでリーチできていなかったα世代やz世代など新たな顧客開拓。客単価の観点ですと、既存顧客への新サービス提供やLTV向上などが挙げられます。
お問い合わせを頂いた企業様のお話を一緒に整理していると自社ならではの「経済圏」や「エコシステム」を構築したいという全社戦略に繋がることがよくあります。その中で、今主流のポイント経済圏とは一線を画す、付加価値が高く、競合が容易に追随できない新たな経済圏構想のキラーコンテンツとして「ソニーグループのエンタメ」に注目をいただいております。

井手:そうした課題を整理する上で、Sony Acceleration Platformが間に入る意味は大きいです。Sony Acceleration Platformにある程度課題を固めていただくと、その後の進行が非常にスムーズになります。今では本当に密に連絡を取り、かなり本音で話せる関係になっています。

高橋:井手さんにそう言っていただけると、嬉しいですね。

 

組織の壁を越え、エンタメ界の「バウンダリースパナー」へ

――広告代理店や他の制作会社とは競合しないのでしょうか。

井手:私たちの強みは、IPの近くにいて、企画から制作、運営までワンストップでできるスピード感だと思います。
実は以前は、当社もかなり縦割りでした。ファンクラブはファンクラブ、イベントはイベントで、それぞれが別のPR会社に発注しているような状態でした。

――その縦割りの組織をどのように繋いでいったのでしょうか。

井手:私の部署がPR、つまり宣伝を担っていたので、繋ぎやすかったのかもしれません。宣伝はどのセクションにも必要ですからね。「それなら、もううちでやりますよ」と、まずは社内の案件をまとめることから始めました。PRという軸があるからこそ、横串を通しやすくなったのだと思います。

高橋:SMSさんは、まさにソニーミュージックグループの中でのバウンダリースパナーの役割を担われ、体現されていると思います。

井手:顧客の課題を解決しながら、エンタメ事業という大きな輪の中でも「バウンダリースパナー」になれたらと思っています。

 

エンタメを通した社会課題解決への挑戦

――SMSさんの将来の展望を教えてください。

井手:やはり、ソリューションを繋げていくことで効果が広がるのを実感していますので、そこをどんどん強化していきたいです。イベントのご相談で来られても、ファンクラブやグッズ制作、リブランディングといったコンサルティング的なご提案も組み合わせて、より大きな価値を提供していきたいですね。また、今後はビジネス系のイベントや、自治体と連携した地方創生、長期的なプロジェクトにも挑戦していきたいです。

――ソニーが採択された東京都のスタートアップ支援プロジェクト「TIB(※)」のグローバルクラスターにも参画されますね。

井手:はい、TIBはSony Acceleration Platformを中心にプレゼンし、「Creative Entertainmentクラスター」というカテゴリで採択されました。具体的な話はこれからですが、今後3年間で、各スタートアップの方々とエンタメ領域で何かしらの協業をしていかなければならないと思っています。私どもの部署はこれまでスタートアップの方々との接点はあまりなかったので、非常にワクワクしています。
また、グローバルという観点でも、私たちの日本のエンタメを世界に発信していくという活動と、東京都が東京から世界に日本を発信していくという取り組みとでやりたいことが合致していると考えています。

高橋:横浜市との事例では、「日本の響きを世界へ」というステートメントを掲げ、今年の4月に「CENTRAL」という新しい音楽フェスを横浜で開催され、地域密着型ビジネスの大きな成功事例になりましたよね。

※TIB(Tokyo Innovation Base):東京都プレスリリース「グローバルイノベーションに挑戦するクラスター創成事業(TIB CATAPULT) 新たに参画する6つの「イノベーションクラスター」が決定」参照

――最後に、Sony Acceleration Platformのソリューションパートナーとしての今後の展望を改めてお聞かせいただけますか。

井手:Sony Acceleration Platformを通じて、普段なかなか出会えない事業会社の方々と出会うことができています。このご縁を大切に、エンタメの面白さをエンタメ領域以外の方々と一緒に伝えていきたいですし、その先にはものすごい数のお客様がいらっしゃいますので、そこを一緒に開拓していきたいです。

高橋:私は、SMSさんと組むことで、より大きな飛躍ができるチャンスだと感じています。お客様が抱える総体的・長期的な課題に一緒にアプローチしていきたいですね。私たちがお客様の顧客基盤の分析をお手伝いすることで、顧客が本当に望んでいるニーズがわかれば、お客様自身ではソリューションをお持ちでなくてもそこには必ずソニーのエンタメであればお役に立てるチャンスがあるはずです。最終的には、ソニーグループの総力を結集してSMSさんと一緒に日本の社会課題の解決にまで挑戦していきたいです。

――エンタメがもっと日常になる、という世界観は素敵ですね。

井手:まさにそうですね。各社が取り組んでいるSDGsやサステナブルな活動も、エンタメを通すことでわかりやすくなります。「やらされ感」がなくなり、自分事として楽しく伝わるはずです。自分の好きなアーティストが言ってくれたら、すっと心に入ってくるんですよね。発信の伝わり方が全く違う。エンタメに関わる仕事をしていて良かったな、と思う瞬間です。その発信力が、人の心を動かし、社会を動かす力になると信じています。

高橋:最後に、本対談を通して、ソニーのエンタメ領域に興味を持っていただいた企業様がいらっしゃいましたら、ソニーグループ全体のバウンダリースパナーの役割を担っている Sony Acceleration Platform までお気軽にお問合せを頂ければと思います。
また、社外の企業様がソニーグループと直接繋がることができる「Boundary Spanning Service」というビジネスマッチングプラットフォームもご用意しておりますので、是非ご登録頂き、ソニーと一緒に新たなイノベーションに挑戦頂けたら幸いです。

 

line

 

いかがでしたか?
Sony Acceleration Platformでは、株式会社ソニー・ミュージックソリューションズのように私たちと共にイノベーションを阻む課題を解決していただけるソリューションパートナーを募集しています。ご興味のある企業からのお問い合わせをお待ちしております。  

 

Sony Acceleration Platformは、新たな価値を創造し豊かで持続可能な社会を創出することを目的に2014年にソニー社内の新規事業促進プログラムとしてスタートし、2018年10月からは社外にもサービス提供を開始。ソニーが培ってきた事業開発のノウハウや経験豊富なアクセラレーターによる伴走支援により、920件以上の支援を27業種の企業へ提供。
新規事業支援だけでなく、経営改善、事業開発、組織開発、人材開発、結合促進まで幅広い事業開発における課題解決を行ううえで、ソニーとともに課題解決に挑む「ソリューションパートナー企業」のネットワーク拡充と、それによる提供ソリューションの拡充を目指します。(※ 2025年9月末時点)

ランキング